4月19日、参議院本会議で「公職選挙法の一部を改正する法律案」が全会一致で可決・成立しました。
この改正案は、かねてから対応が望まれていた選挙運動でのネット利用を解禁するためのもの。今回の法案成立により、今夏予定されている参議院議員選挙を皮切りに、インターネットを使った選挙運動、いわゆる「ネット選挙」が始まります。
全会一致で可決ということで、各政党ともネット選挙を支持しているわけですが、立候補予定者を対象に研修会を開催するなど、選挙におけるインターネット活用の取り組みもさっそく本格化しているようです。
もちろん、選挙運動は選挙運動期間(選挙の公示・告示日から選挙期日の前日まで)のみに限られており、今まで同様「事前運動」はできません。また、未成年による選挙運動は禁止です。
とはいえ、選挙運動以外の政治活動では、すでにインターネットが広く使われています。政党や政治家のホームページやブログなどはもはや当たり前に開設されていますし、YouTubeなどで政党の専門チャンネルを設けて番組を流す、といったことも、もはや特段珍しいことではないでしょう。
ネット選挙いよいよ解禁、何ができる?
選挙運動期間中の「文書図画の頒布・掲示その他の選挙運動」は公職選挙法によって規制されており、インターネット等の利用も、この「文書図画の頒布」にあたるとして禁止されています。
そのため、選挙期間になると、政党や候補者はホームページやブログ、Twitterなどの更新を控えるなどしなければなりませんでした。
しかし今回の改正で、ホームページやブログをはじめ、Twitter、Facebook、LINEといったSNS、YouTubeなどの動画投稿サイト、Ustreamなどの動画配信サイトなどを使った選挙運動が、全面解禁されるのです。
たとえば、こんなことが選挙運動期間中も可能になります。
- 政党のホームページからマニフェストをダウンロードする
- 候補者のブログでビラ、ポスターの画像を配布する
- 選挙運動の模様をTwitterでリアルタイムにつぶやく
- 動画撮影した選挙演説をYouTubeで流す
- 政党がYahoo!のトップページにバナー広告を出す
こうしたことができるようになるのは、政党や候補者だけではありません。一般の有権者も、選挙期間中にホームページやブログ等で政党の支持を表明したり、特定の候補者を応援したりすることができるようになるのです。
ネット業界の対応
ネット選挙の解禁を受け、無料通話アプリの「LINE」は、政党要件を満たす全政党に対し、公式アカウントを無償提供することを発表。
日本国内のユーザー数は4,000万人以上で、国民の3人に1人が使っている計算。とくに20代では6割以上が利用しているというデータもあり、選挙運動におけるLINEの影響力はけっして小さいものではないでしょう。
また、多くの政治家がブログを開設している「アメーバブログ」を運営するサイバーエージェント社は、ライブ動画配信サービスや仮想空間「アメーバピグ」などを通じて政治家向けの支援を推進すると発表しています。
その他、ネット広告やインターネットリサーチの企業なども、ネット選挙の解禁によって注目を集めているようです。
いいことずくめのように思えますが、第三者による「なりすまし」と誹謗中傷への対応など、ネットを利用するうえで避けられない問題も残ります。
政党側では、インターネット上の情報を監視し、必要に応じて反論や削除を要請する専門のチームを立ち上げるなどの対策を講じる一方、Twitterは、政党や候補者に「認証マーク」を付与してなりすましの防止を図る、といったことも実施するようです。
ネット選挙で政治家や有権者は変わるか?
このように、いいことばかりではないネット選挙ですが、現時点では、政党も政治家も有権者も、解禁によるメリットのほうが大きいと考えているわけです。
韓国では昨年の大統領選挙からネット選挙が全面解禁され、前回選挙より投票率が13%もアップ。とくに若者の投票行動に大きく変化をもたらしました。
なにしろ初めてのことですから、今のところ「何ができるようになるのか」という論調にとどまっている感があります。
しかし、このネット選挙がきっかけとなって日本の政治がどう変わっていくのか、これから目が離せなくなることは間違いないでしょうね。