本日は、会社更生法を申請したNOVAについての一考察です。
やられました・・
英会話の最大手のNOVAが、先日、会社更生法を申請しました。
実は私の息子(7歳)が、NOVAに通っておりまして、私もNOVA
倒産の被害にあった一人なのです。
それも三年間の授業料を前払いしていたものですから、その被害たるや
・・・・、という感じで、かなり痛い目にあいました。(;_;)
入会時に三年分の費用を前払いしていたのですが、その期限が今年の4
月でした。
そして去年の12月に、
「来年の4月に満期になりますが、今なら三年分の費用を前払いキャ
ンペーンで、20%の割引があります。」
という甘い言葉にのせられて、去年の12月に3年分の費用を支払って
しまったのです。(..)
その後、4月に中途解約に関する裁判でNOVAが敗訴し、あっという
間に業績が傾き、先日の更正法へとつながってしまいました。
去年の12月の時点ではNOVAが倒産するとは思いもしませんでした。
ただ、もし今年の4月であれば裁判にNOVAが負けていましたので、
おそらく3年分は払わずに済んだと思います。
という訳で今となっては、12月に払わないで、満期の4月まで待てば
良かったと、奥さんと二人ため息をついている今日この頃です。
(そんな中、NOVAに行けずに、遊び時間が急に増えた息子(7歳)
だけは、毎日ご機嫌に暮らしておりますが・・。(^_^;
NOVAのビジネスモデルの問題点
さて、NOVAが破綻した理由について、私なりの考察をブログにも書
いていますので、よろしければこちらもアクセスしてみてください。
【NOVA倒産の真の理由】
http://blog.akibare.net
上記のブログでは、「低コストを実現するビジネスモデル」について書
いているのですが、本メールレターでは、
前払いビジネスの功罪
について論じてみたいと思います。
一般的に企業経営において、売掛金の回収サイクルは、短いほうが経営
が安定します。
そして、できれば売掛金(後払い)ではなく、前払い金(先払い)の方
が、資金回収リスクもなく、資金繰りも好転しますから、より望ましい
訳です。
NOVAに限らず、英会話学校の大手はどこも授業料の「前払い」制を
とっています。
1ヶ月、あるいは3ヶ月や半年、場合によっては1年の授業料を前払い
させるのです。
もちろん前払いの期間に応じて割引率が変わり、長期の前払いの方がお
得になるように設定されています。
さて、英会話の業界では、この前払い期間が「1年以内」というルール
になっているそうなのですが、NOVAはこれを最長「3年」にしてい
ました。
業界ルールを無視して、かなりの長期の前払い制度を用意していたので
す。(私はこれに引っかかった訳ですが・・・(^_^;
NOVAの場合、成長の戦略が、
・多額の広告宣伝費を投入して、認知度をあげる
・駅前に他店舗展開して、沿線のシェアを一気に取る
というモデルでした。
初期の広告費がかかっても、生徒が増えれば後で資金を回収できる、と
いう前提で、TVのCMを中心に相当の広告費を投入していたのです。
そして、その広告費を捻出するための施策の一つが「授業料の前払い」
という訳です。
毎月の支払いだと、NOVAの手元の現金はあまり増えませんが、3年
分の前払いだと、当座のキャッシュは相当に潤沢となります。
この前払いで手にした資金を元に、大胆な広告戦略に打って出た、とい
う感じだったのです。
前払いは諸刃の剣
ただしこうした前払いの場合、授業を提供するコストが、当然あとで必
要になります。
外人講師の人件費や、教室の運営コストが、後々、ボディーブローのよ
うに効いてくるのです。
授業料が前払いだったとしても、こうした運営費をまかなえるような資
金管理ができていてれば、問題にはなりません。
ですがNOVAの場合、ここの部分がかなりルーズだったようで、前払
いの費用をあっという間に使い切ってしまい、日々の運営に要する費用
が足りなくなってしまいました。
かくして資金繰りがタイトになり、その結果、外人講師の人件費を減ら
しました。
生徒が増えても、外人講師の人件費の総額を逆に減らしたため、講師を
採用できず、外人講師の質・量が著しく低下しました。
講師が足りなくなったため、生徒は予約が入らなくなります。
ついに生徒の不満が爆発し、中途解約が相次ぎました。
そして前払い授業料の返還で資金が枯渇し、一気に倒産へと進んでしまっ
たのです。
長期の前払いは善し悪し
このようにNOVAの破綻は、
・授業料の前払いで得た資金を元に店舗拡大を図る、というビジネ
スモデルを裏で支える「資金管理能力」がなかった、
という所に、大きな原因があります。
このメールをお読みのあなたは、「3年も前払い」なんてことはないか
もしれませんが、資金管理の能力が企業の盛衰を決めるのは、大企業で
あれ中小企業であれ同じです。
ぜひNOVAのケースを他山の石として、自社の資金運営についてもう
一度見直してみるのも良いのではないでしょうか。