新感覚ソーシャルネットワーク「Pinterest」
Pinterest(ピンタレスト)を、ご存知でしょうか。
Pinterest(http://pinterest.com)は、今、アメリカで大注目のソーシャルネットワークサービスです。その名のとおり、ピン(Pin)で、興味(interest)のある写真/画像を集めて、オリジナルのスクラップブックを作るというユニークなサービスです。アメリカでは今年の一月に訪問者数が1600万人を突破し、Facebookの「次」を担うSNSになるのではないかと大いに話題になっています。
本稿では、その特徴を踏まえながらPinterestのご紹介をし、かつ中小企業のみなさまにどのような活用のチャンスがあるのかを、併せて探っていきたいと思います。
Pinterest(ピンタレスト)とは
Pinterestが、これまでのSNSと最も異なっているのは、「画像」を軸にしたサービスであるという点です。
大きく分けて、次の3つの機能があります。
- 画像をピンする
- 自分のスクラップブックを作る
- 公開、共有、つながる
Pinterestではまず、画像を「ピン」することが第一歩です。画面上にある、他のユーザーが投稿した写真をピンして留めることも出来ますし、自分の画像を投稿してピンすることも出来ます。ここで言う「ピン」するとは、Facebookにある「いいね!」ボタンと近い機能であるとお考えください。「ピン」する際には、写真画像に対して簡単なコメントをつけることが可能です。ちなみに、自分でピンすることを「Pin」、他のユーザーの写真に対してピンすることを「Repin」と言います。
次に、こうした「Pin」を繰り返すことで世界にたったひとつの、自分だけのスクラップブック(ボード)を作ることができます。このボード作りが、Pinterstの最大の醍醐味です。自分のお気に入りの写真を掲載したボードを作って、コレクションのようにしても楽しいですし、旅行の際に撮影した写真を集めて、記念のフォトブックのようにするのも便利です。「Art」「Design」「Sports」などの様々なカテゴリが用意されているので、それらを利用して分類すると、より一層写真の掲載されたボードを充実させることが出来ます。
そして、こうして作り上げたスクラップブックを通じて、他のユーザーと画像の共有をすすめていきます。自分の画像に対して「Pin」をしてもらったり、相手の画像を「Pin」したりして、相互の交流を深めていきます。従来のFacebook、twitter、あるいはmixiといったSNSは原則として「文章」を投稿するものでした。文章のやり取りを軸にして、そこに時おり写真や画像を補足として掲載すると言った形です。それに対してPinterestでは、画像をメインに投稿し、他のユーザーとコミュニケーションを取れるという点が、大きな違いです。そして、各種ソーシャルネットワークが質の高い書き込み(口コミ)を生み出すように、Pinterestも質の高い画像が掲載され続けているのです。
Pinterest(ピンタレスト)の特徴
キャプチャ画像をご覧ください。Pinterestではこのように、投稿された写真/画像で画面全体が覆われています。そして、次のような3つの特徴があります。
- 見てすぐ分かる
- おしゃれ
- 操作しやすい
第一に「見てすぐ分かる」ということがあります。Pinterestでは、開いた瞬間に写真や画像が並んでいるため、何が今表示されていて、その中に自分の興味(interest)の対象があるかどうかをすぐに把握することができます。文章では、こうはいきません。例えば、Facebookでは自分の興味のある投稿であるかどうかは、タイトルを見て、さらに「続きを読む」をクリックして内容を把握するといったプロセスが必要となります。しかし、Pinterestではそれは一瞬で解決します。興味があるかないかの判別が一目でつくため、直感的に次のアクションが取れるのです。世の中には「百聞は一見にしかず」ということわざがあります。言葉での説明を長く行うよりも、一枚の写真や画像の方が伝えたいことを雄弁に物語る場合があります。「見てすぐに分かるということ」、これがPinterestの最大の長所です。
次に、おしゃれであるという点。従来のソーシャルネットワークと比べて、写真画像だけで構成されたその画面は、余分な要素がなく格段にセンスが感じられます。文章ではなく、画像を中心に見せていくという逆転の発想が、この効果をもたらしていると言えます。また、写真の周りを占めるデザインにも、洗練された丁寧な意識が感じられます。写真素材を活かすために、周辺要素には強い配色はなく、むしろ引き立てるような淡いトーンの色が基調になっており、幅の揃えた画像が並んでいる様子は目に心地よいものです。さらに、ひとつひとつの投稿には周りにシャドウがつけられており、実際にメモをピンで留めたような演出も、雰囲気の向上に繋がっています。
そして最後に、操作しやすい画面が挙げられます。Pinterestでは、画像という視覚的な要素をメインに扱うという性質からか、あらゆる操作が、直感的に出来るように工夫されています。難しい言葉やボタンがたくさん並んでいるような画面は少なく、全ての操作が、簡単なボタンへのマウスクリックで完結するようになっています。
以上のような特徴からPinterestは今、20~40代の女性を中心に支持を広げています。Facebook等では物足りなくなった高感度な女性たちが、新しいソーシャルネットワークサービス「Pinterest」を通じて、直感的なコミュニケーションを楽しんでいる姿が伺えるようです。
他サービスとの違い
ここで、他の類似サービスとの比較をしてみましょう。
まず、Google画像検索(https://www.google.co.jp/imghp)です。画像が同じようにたくさん並んだインターフェイスに類似点があるサービスと言えるでしょう。Google画像検索は非常に便利なサービスで、おそらく、データベースにある画像の量ではPinterestを上回っていると思われます。しかし、決定的に異なっているのは、そこにある画像の質です。例えば「shoes」という単語をGoogleとPinterestの両方で検索してみてください。すると明らかに、Pinterestの方に、趣味の良い素敵な靴が多数並んでいることに気づくかと思います。人の手によって「Pin」された選別済みの画像と、機械である検索ロボットが(比較的)無作為に収集した画像の差が出ているのです。
次にフェイスブック(http://www.facebook.com/)との違いです。フェイスブックがソーシャルネットワークサービスとして現在世界最大の存在であることは、事実です。しかし、Pinterestにはフェイスブックにはない強みがあります。それは、常に「目で確認できる」という点です。フェイスブックでは実名に基づいて、住所、年齢、性別、出身地、職業といったあらゆる個人データを入力して記事を投稿します。しかしそれらはすべて文章に過ぎず、原則としては、相手をテキストデータから理解し把握する必要があります。一方のPinterestは、原則として画像をベースにしたコミュニケーションです。その場合、「見る」という手段によって、対象への理解がすばやくダイレクトに行えるという特徴があります。Facebookに比べて、Pinterestは遥かに手軽で直感的なコミュニケーションが取れるのです。
最後に、記事を集めてスクラップブックを作れるという共通点から、タンブラー(https://www.tumblr.com/)を挙げたいと思います。タンブラーでも、Pinterestと同様に、他のユーザーの投稿を自分のページに転載することが可能です。しかし、タンブラーはブログを収集する機能を持っているため、先にあげたFacebookと同じようにテキストデータでのページ作りが原則となってしまいます。この点で、やはりPinterestの方がより直感的なコミュニケーションが取れると言えるでしょう。
企業での活用
Pinterestは、中小企業の経営者にとってどのような可能性を持っているでしょうか。
先ほども少し述べたように、アメリカでは利用者の60%以上が20~40代の女性というデータが出ています。したがって、女性向けの商品やサービスを取り扱っていて、写真や画像での訴求を行いたい中小企業にとっては、大いに親和性のあるサービスであると言えそうです。
例えば、アパレル、雑貨、セレクトショップなどが商品写真をセンスよく並べてアピールしたり、エステ、ネイルサロン等のお店が画像を掲載して店内の様子を伝えたり、あるいは、ウェディング、旅行等の「形のない」サービス販売において少しでもイメージを膨らませてもらうためにもPinterestでの画像による訴求は有効です。
アメリカでは既にいくつかの企業の導入事例も出ているようです。例えば、
などです。いかがでしょうか。これらの企業が果たして実際にどれほどの集客や、成果をあげているのかは分かりません。しかし、ページを見るとすぐに、そのサービスのイメージがダイレクトに伝わってきますし、好印象であることは間違いありません。テキストがなく、画像のみで構成されたページがもたらす効果は、想像以上のものがありそうです。
まとめ
Pinterestは、まだまだアメリカが中心のサービスで、利用言語も英語のみです。日本国内では登録者数も数万人と言われ、知名度も低い存在です。しかし、これまで見てきたように、画像を中心とした直感的なコミュニケーションは女性を中心に大いに支持を受けており、企業の活用事例も出てきています。その意味で、次代のソーシャルネットワークサービスとして注目に価するメディアであると、言えるでしょう。
当連載「中小企業向け ソーシャルメディア活用法」では、これからも、海外での先端事例も交えながら最新動向をお送りしますので、ご期待ください。