自社の魅力を伝える!USPの作り方
マーケティングにおいて重要な概念の1つにUSPがあります。USPとはUnique Selling Propositionの頭文字を取ったマーケティング用語で、日本語に直訳すると「独自の売りの提案」など訳することができます。
本記事では自社の商品やサービスの魅力を伝え競合と自社を差別化するために重要なUSPの作り方について説明します。
◆USPはキャッチコピーではない
まず、USPを作る前に考えたいのが、USPとは何かということです。冒頭で説明したとおり、その会社の製品やサービスの「独自の売りの提案」を一言で表したコピーです。
例えば、掃除機メーカーのダイソンの「吸引力が変わらないただ一つの掃除機」、法人向け事務用品通販のアスクルの「今日頼んだら明日来る」、ライザップの「結果にコミットする」などが代表例として挙げられます。
この説明を読むと、USPとはキャッチコピーのことだと理解した人もいるかもしれません。確かにUSPはキャッチコピーのようですが必ずしも同じものではありません。
言葉のひびきが良かったり、洒落の効いた言い回しであればキャッチコピーにはなれますが、USPにはなれません。USPはマーケティングにおける自社の強みを端的に表したコピーです。
キャッチコピーとの違いを明確にしてUSPの作り方を考えるためにも、USPとUSPではないコピーの違いについて具体例をもとに分析してみます。
◆魅力を伝えるUSPを分析する
まずは、代表的なUSP事例をもとにUSPはなぜユーザーに商品やサービスの魅力を伝えられるのかについて分析します。
☆ダイソン「吸引力が変わらないただ一つの掃除機」
まず「ダイソン」のUSPについて分析します。吸引力の落ちない掃除機というのはダイソンの強みであることがUSPから読み取れます。しかし、ダイソンが丈夫な掃除機を作っているというだけではユーザーはこのUSPから魅力を感じないでしょう。
「吸引力が変わらないただ一つの掃除機」というコピーがユーザーにとって魅力的なのは、ユーザーは使うにつれて掃除機の吸引力が衰えることを不満に思っている、ダイソン以外の掃除機は吸引力が衰えるという2つの前提があるからです。
☆アスクル「今日頼んだら明日来る」
アスクルのUSPについても分析します。まず、アスクルの強みは今日頼んだら明日来るということです。
アスクルが注目を集めた当時は法人の事務用品を発注してもすぐに届けてくれる会社はなくて、すぐに使いたい事務職の人が困っていました。今日頼んだら明日来るのはそのようなユーザーにとってありがたいサービスだったのです。
☆ライザップ「結果にコミットする」
ライザップは結果にコミットするをUSPとして、目標にした体重まで減量できなければ料金全額返金などのサービスを行っています。
ライザップのUSPが注目される背景として、ダイエットのためにスポーツジムに入会しても結局行かずにお金だけ払っている人が多いことがあります。通常のスポーツジムは個人の運動や食事の管理をしないのとで結果を保証することができません。
よって、成果を保証してくれるライザップが魅力的であり「結果にコミットする」というUSPがユーザーの心に響くのです。
◆USPではなくキャッチコピーである事例
今度は逆にUSPのようでUSPではないコピーの事例について説明します。もちろんUSPでないから悪いというわけではなく、下の3例はいずれも優れたキャッチコピーです。
☆セブンイレブン「セブンイレブン、いい気分」
少し前のセブンイレブンのテレビCMの最後には「セブンイレブン、いい気分」というコピーが入っていました。口に出すとひびきが良く、なんとなく覚えやすい標語なのでセブンイレブンの名前を覚えてもらうためには有効なコピーです。
しかし、なぜセブンイレブンに行くと良い気分になるのか、他のコンビニではダメなのかについてはよくわからないのでユーザーに「独自の売り」を説明していません。
☆ロッテ「お口の恋人」
ロッテの「お口の恋人」というコピーも良いキャッチコピーではありますがUSPではありません。お口の恋人というキャッチコピーは、お菓子の甘さや食べることによって幸せになっている状態をイメージさせます。
しかし、「独自の売り」を説明しているわけではありません。他メーカーと比較してロッテが特別に甘いお菓子を作っているわけではありませんし、お菓子の甘さが足りないと困っている人もいません。
☆マクドナルド「I’m loving it」
マクドナルドの「I’m loving it」も有名なコピーですがUSPではありません。
マクドナルドで食事をする楽しげな様子をよく表現したコピーではありますが、ユーザーの悩みや他のファーストフード店との差別化については、このコピーからはイメージできません。
◆USPとは3C分析の結果を端的に表現したコピーである
上の事例を比較するとUSPとただのキャッチコピーの違いが分かります。USPは自社の強みだけではなく、ユーザーのニーズと競合のサービスに関する説明も含意されているということです。
上では、ダイソン、アスクル、ライザップのUSPについて分析しましたが、いずれの自社の商品やサービスの強みだけではなく、ユーザーにはこのようなニーズがある、他の企業がそのニーズに応えてくれないという前提がありました。
つまり、USPとは3C分析の結果を端的に表現したコピーなのです。3C分析はマーケティングの基本かつ重要な概念で、自社(Company)、競合(Competitor)、市場(Consumer)の3つの頭文字をとって3C分析と呼ばれています。
マーケティングを行う際には、自社、競合、市場の3つを調査した上で、競合が満たしていないけれども自社の強みによって満たすことができる市場のニーズを考えなければなりません。
まず3C分析を行うことによって競合との差別化の戦略を考えて、それをもとに個別のマーケティング施策を考えます。
優れたUSPはいずれも3C分析の答えになっていることがわかります。
◆魅力的なUSPを作るためには?
魅力的なUSPを作るためには、ビジネスモデル自体が魅力的である必要があります。つまり、競合が応えられていないユーザーの悩みに応えられる強みを持つことがまず何より重要です。
そうした前提で優れたUSPはコピーを見れば、どのようなユーザーを対象にしていてどのようなニーズを満たしてくれるのかがすぐにわかるようになっています。
例えばライザップのUSPを見れば、ライザップというサービスはダイエットのためにジムに入会したけれども意思が弱くて続かない人が痩せるためのサービスであることがすぐにわかります。
このような優れたUSPを作るためには3つのポイントがあります。
1つ目は3C分析をきちんと行うことです。先ほど説明したとおり、USPは3C分析の答えです。3C分析をせずに思い付きでUSPだけ考えると、競合とどう差別化されているかわからない、自社の強みがよくわからないコピーになります。
2つ目はユーザーの悩みと解決策にフォーカスすることです。USPを見れば、ターゲットにしているユーザーが私向けのサービスだと思える位に、ユーザーの悩みにフォーカスしてUSPを考えた方が良いでしょう。
3つ目は一言に凝縮させるということです。あまりにも長いUSPは覚えて貰えません。単文で20~30文字以内に収まるような文言を考えた方が良いでしょう。
ちなみに、実際にUSPを作ろうとすると、良いUSPを作ることは難しいということがわかります。優れたUSPを作るためにはビジネスモデル自体の独自性が高く、ありそうでなかったビジネスモデルでなければならないからです。
よって、事例のような良いUSPを作ろうと思えばいつまでもUSPが完成しないという会社も少なくありません。
自社の強みと競合との差別化が説明できればある程度の完成度で妥協して使った方が良いでしょう。
◆USPの作り方のまとめ
以上のようにUSPの作り方について説明してきました。USPを作るということはマーケティングを行う上で非常に重要です。
USPは3C分析の答えなので、すべてのマーケティングの源泉となります。誰にどのように自社のサービスをアピールするべきなのか、統一感を持ちつつ個別のマーケティング施策を行うためにはUSPが基本方針となります。
ぜひ、これから商品やサービスのマーケティングを始める場合は、3C分析とUSPの設定から行ってください。